5限目 ウェザー・ナレッジの創出

〜経験と統計を通じた土地固有の天気法則〜

膨大な気象データ⇒気象情報⇒気象知識
観測データの収集から数値予報の実行、天気予報の作成・発表までの処理(気象庁)
●数値予報が「予測の要」
予測の要は数値予報です。アメダス・データや高層観測のデータなどの観測データを「数値予報」モデルによって情報に変換します。この情報をもとにヒトである予報官が天気予報・警報等の作成・発表を行っています。 そして、この天気予報は下記に示すマスメディアと産業の2つに分かれます。
●マスメディアの天気予報(不特定多数ユーザー)
TVやラジオなどのマスメディアの天気予報は、左記に示す「予報」がもとになります。公共性や防災上の観点から、気象庁の天気予報をもとに客観性、迅速性、正確性のある情報をお伝えしなければなりません。
●産業天気予報(特定ユーザー)
社会・経済が変化する中で、天気が経営活動に影響を受ける産業ではヒトの実践を通じた気象知識による意思決定サービスを必要としています。
引用 【数値予報とは(気象庁HPリンク)】  

平年値 〜膨大な気象データで定量的に気象特性を把握〜
●平年値とは?(気象庁)
平年値は、その時々の気象(気温、降水量、日照時間等)や天候(冷夏、暖冬、少雨、多雨等)を評価する基準として利用されると共に、その地点の気候を表す値として用いられています。 気象庁では、西暦年の1の位が1の年から続く30年間の平均値をもって平年値とし、10年ごとに更新しています。
●なぜ、30年間?(気象庁)
世界気象機関(WMO)の技術規則により、30年間の観測値を用いて平年値を作成しています。欧米や日本など多くの国では、気候変動や観測地点の変化等を考慮して、10年ごとに更新しています。

データ、情報、知識の関係を確認する。
(1)データ(data)
データは、文字などの記号や数値で表され、情報の構成要素となりますが、それだけでは何の意味を持たない「素」の状態です。
気象観測によるデータ(アメダス、高層気象などの客観値)

(2)情報(infomation)
情報は、データの集合であると同時に、構成されることで意味を含み、作成者の意図が与えられたものです。 ただ、情報の場合は、作成者の主観性よりも、客観性や正確性が重視されます。また、情報はなんらかの媒体によって表現されるので、複写したり、空間を超えて伝播・流通させることができます。
気象観測によるデータをもとに、数値予報の計算結果で作成した天気予報(気象情報)。および気象キャスターによる気象解説や季節情報。

(3)知識(knowledge)
物事や事象の本質についての理解や信条、あるいはメンタルモデルと考えることができます。言い換えれば、知識とは、情報を確認し、行動に至らしめる「秩序」なのです。 ですから知識は、古来から「正当化された真なる信念」とも定義されてきました。 【ナレッジマネジメント 紺野 登 著】
気象情報を意思決定に活用するための知識。たとえば、小売業は、気象情報を与件として商品の仕入計画を立てる。

【ウェザーナレッジ】
異常気象化や社会・経済の構造変化の中で、気象情報の送り手は、受け手に気象情報を適切に伝えていくためには、事象・現象の経験と信条・信念への思念を融合した気象知識の創造に取り組む必要があります。 また、送り手が気象情報の意味を理解できるコミュニケーションの場が必要です。

岡田 武松 博士の言葉(1874年8月17日 - 1956年9月2日) 気象学者、第4代中央気象台長(1923年)
「観測精神は、軍人精神とは違う。観測精神とは、あくまでも科学者の精神である。自然現象は二度と繰り返されない。観測とは、自然現象を正確に記録することである。同じことが二度と起こらない自然現象を欠測してはいけない。それはデータの価値が激減するからである。まして記録をごまかしたり、いい加減な記録をとったりすることは科学者として失格である。」

図 ナレッジマネジメント(紺野 登 著)参考 ウェザー・ナレッジは、送り手と受け手が情報共有して相互理解を深めることが目的です!

気象のビッグデータ(BIGDATA)をどのように料理するか!?
●ビックデータ(BIGDATA)
ビックデータは3つの特性(Variety:多様性)、(Velocity:頻度)、(Volume:量)があります。さらに非構造化データです。このようにビックデータとは、多様で高頻度に発生し続ける大量のデータを指しているようです。 2015年には、全世界のIPトラフィックはゼタバイトに達するといわれています。0を並べると、『1 000 000 000 000 000 000 000』とうんざりしてしまう数字です。
●スパーコンピューター京
京とは1兆の1万倍のことです。またまた、0を並べると、『100 000 000 000 000 000』です。スパコン京とは、1秒間に1京の計算速度の性能をもつことから名づけられたようです。 2006年に開発が始まり、2011年には世界一達成を果たしました。「2位じゃだめなんですか」と仕分けされながらも、面目を保った印象があります。しかし、2012年には2位に後退しました。 「1位」のほうがいいですが、社会に役立つ1位であればいいと思います。
●ウェザーデータ・サイエンティスト
社会に発信される大量のデータの中から必要なものを探すことは、「わらの山から針を探す」というように不可能に近いことです。 ところが、現代ではスーパーコンピューターの技術革新により、ブログ、ツイッター、交流サイト(SNS)などのソーシャルメディアの情報を収集・分析することが可能になりました。 また、地球環境解析や防災などでも運用され、様々な産業での利活用が期待されています。 一方で、データを利活用するための戦略を立てる人材の育成が急務になっています。「コンピュータによる短期的な分析力」と「ヒトによる長期的なビジョンを示す能力」の社会的役割分担が必要だと思います。 気象で言えば、数値予報によって気象データから計算された気象情報を統計学、経営学によってウェザーナレッジ(気象知識)を創出することが望まれます。日ごろから、気象データを見る訓練が必要です。まずはパソコンの表計算ソフトで簡単にてきる統計を用いて、スモールデータの料理から始めましょう!
俺(PIG:豚)を料理するなよ!ビッグデータを料理しろ!ブヒッ! 気象データを料理!気象データの鉄人を目指せ!?
アメダス統計の手法セルダス(エクセルにデータを出す)〜
【目的】
過去のアメダス・データ【過去の気象データ検索(気象庁HPリンク)】のグラフを作成して「時間軸と気象データ」を把握します。
そして、表計算ソフトの関数を使用して定量的分析を行います。

【手順1】
表計算ソフトのマクロを使用し、気象庁HPからデータを自動的に取得します。
【手順2〜表を図表に変換〜】
表計算ソフトでグラフを作成して、時系列で把握します。
【手順3】
統計関数の使用して、定量的分析を行います。

図 気象庁のアメダス配置図(神奈川県)
アメダスは統計学で言えば、「観察調査法」です。「観察調査法」とは、計測器その他の機械装置による自動的な観測・測定からデータを集めたりする方法。

アメダス統計に使える、エクセル統計関数
MAX関数 最大値を求める値(セル範囲)を指定。引数はカンマ(,)で区切って最大30個まで指定。 日最高気温のデータ出力など
MIN関数 最小値を求める値(セル範囲)を指定。引数はカンマ(,)で区切って最大30個まで指定。 日最低気温のデータ出力など
AVERAGE関数 平均値を求める値(セル範囲)を指定。引数はカンマ(,)で区切って最大30個まで指定。 平均気温のデータ出力など
COUNTIF関数 条件に一致するセルの個数を求める。文字列、数値、数式が可能。例えば、【=COUNT(B1:B31,>=35】 で月間の猛暑日(日最高気温35℃以上)の日数が求めらる。 猛暑日の出力など、データを情報に転換。
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